実務 公開: 著者: ソロ法人ドットコム運営者

eLTAXで法人住民税・事業税を自分で申告する手順|利用届出からPCdeskの操作まで

本記事は公的機関の公表情報(執筆時点・2026年8月)にもとづく調査記事です。画面構成・様式・動作環境は改定されることがあるため、実際の手続きの際はeLTAXおよび所轄自治体の最新情報をご確認ください。

法人の決算を自分でやろうとすると、国税(法人税)の情報は比較的そろっているのに、地方税の側でいきなり手が止まります。「e-Taxは登録したが、eLTAXは何をどうすればいいのか」「利用届出を出したのに、申告書の提出先が選べない」といった詰まり方です。

eLTAX公式サイトはマニュアルとしては整っているものの、「どの順番で・何を先に用意すれば止まらないか」という視点では書かれていません。この記事では、ひとり法人(マイクロ法人)が地方税を自分で電子申告する前提で、利用開始から申告・納付までの流れと、実務でつまずきやすい箇所を整理します。

決算全体の流れは決算を自分でやる方法に、年間の提出物と期限は年間手続きカレンダーにまとめているので、あわせて読むと位置づけがつかみやすくなります。

eLTAXとは: e-Taxとの違いは「国税か地方税か」

eLTAX(エルタックス)は、地方税の申告・申請・納税をインターネット経由で行うための「地方税ポータルシステム」です。運営しているのは国ではなく、地方公共団体が共同で設立した地方税共同機構です。

e-Taxとは管轄が違うだけで、役割は対になっています。

e-TaxeLTAX
対象の税国税(法人税・地方法人税・消費税・源泉所得税など)地方税(法人住民税・法人事業税・償却資産税など)
運営国税庁地方税共同機構
提出先所轄税務署都道府県税事務所・市区町村
ログインに使うもの利用者識別番号利用者ID
主な操作ソフトe-Taxソフト(WEB版・DL版)などPCdesk(WEB版・DL版・SP版)など

重要なのは、e-Taxの利用者識別番号を持っていてもeLTAXは使えないという点です。両者は別システムで、それぞれ別に利用開始の手続きが必要になります。決算期に「国税は出せたのに地方税で止まった」となるのは、たいていこの取り違えが原因です。

ひとり法人がeLTAXで申告するもの

役員1名のひとり法人が地方税として申告するのは、おおむね次の3本です(償却資産がある場合は償却資産申告も加わります)。

税目提出先内容
法人道府県民税(都民税)都道府県税事務所均等割 + 法人税割
法人事業税・特別法人事業税都道府県税事務所所得割(中小法人)。特別法人事業税は国税だが都道府県へ併せて申告・納付
法人市町村民税市区町村均等割 + 法人税割

均等割「年7万円」の内訳

ひとり法人の固定コストとしてよく挙がる均等割の年7万円は、1つの税金ではなく2つの合計です。

区分標準税率の年額(資本金等1,000万円以下)提出先
道府県民税の均等割20,000円都道府県
市町村民税の均等割50,000円(従業者50人以下)市区町村
合計70,000円

均等割は所得ではなく法人の規模に応じて課される税なので、赤字でも原則として発生します。つまり赤字でも申告書の提出は必要です。「利益が出ていないから出さなくていい」という扱いにはならない点が、地方税で最初に押さえるところです。維持費全体のなかでの位置づけはマイクロ法人の年間維持費で数字とともに整理しています。

なお、東京23区内にのみ事務所がある法人は例外で、道府県民税分と市町村民税分をまとめた「法人都民税」として都税事務所に一本化して申告します。区役所への申告は発生しません。23区外の市部や他の道府県では、都道府県と市区町村の2か所へ別々に申告します。

法人事業税は、外形標準課税の対象外である中小法人であれば所得割のみです。赤字であれば事業税・特別法人事業税は生じませんが、均等割の申告があるため申告書自体は提出します。

利用開始の流れ: 利用届出から利用者IDまで

eLTAXを使い始める手順は、大きく4段階です。

1. 電子証明書とパソコン環境を用意する

法人が申告データを送信するときは、電子署名のための電子証明書を使います。法人でよく使われるのは次の2つです。

商業登記電子証明書は申請してから受け取るまでに手間と日数がかかるため、決算月の直前ではなく、余裕をもって準備しておくと当日の作業が詰まりません。

2. PCdesk(WEB版)で利用届出(新規)を提出する

eLTAXの利用開始手続きは「利用届出(新規)」と呼ばれます。この手続きは、ブラウザから使える**PCdesk(WEB版)**で行います。DL版では利用届出(新規)ができないため、ここは入口が固定されていると考えてください。

入力するのは、法人名・所在地・代表者・メールアドレスといった利用者情報と、主たる提出先(自治体)利用する税目です。税目は一覧から選んで追加していく形式で、必要なものをすべて追加してから次へ進みます。

3. 利用者IDを控える

利用届出(新規)を送信すると、送信直後の画面で利用者IDが発行されます。ここが最初の関門です。eLTAXの案内では、利用者IDは送信結果画面以外では通知されないとされており、後日届く「手続き完了通知」メールにも利用者IDは記載されません。画面を閉じる前に、控えを取っておく必要があります。

一方で、利用届出を行った時点で利用者IDは有効になるため、完了通知メールを待たずに申告作業へ進めます。「メールが来ないと使えない」と思って待つ必要はありません。

4. 電子証明書を登録し、申告に進む

利用者IDの取得後、電子証明書をeLTAXに登録すれば、申告データに電子署名して送信できる状態になります。

PCdeskの種類と使い分け

eLTAXが無償提供している専用ソフトがPCdeskです。執筆時点では次の構成になっています。

種類形態主な用途
PCdesk(WEB版)ブラウザ利用届出(新規)、申請・届出、納税
PCdesk(DL版)パソコンにインストール申告データの作成・送信、メッセージ照会など
PCdesk(SP版)スマートフォンメッセージ照会など
PCdesk Nextブラウザ対応税目の申告等(対象手続きが順次拡大)

法人住民税・事業税の申告書を作って送るところまでを1本で完結させたい場合、実務ではDL版が使われることが多いソフトです。ただしDL版はWindows向けで、macOSは動作環境に含まれていません。Macで法人を運営している場合は、Windows環境を用意するか、後述する申告ソフト経由での送信を検討することになります。動作環境にはWindows 11(64bit)が追加済みで、ブラウザはMicrosoft EdgeやGoogle Chromeが推奨環境に入っています。

PCdesk Nextは新しい系統のソフトで、対応する税目・手続きが順次広がっています。自治体のサイトでも「この手続きはPCdesk Nextから」と個別に案内されるケースが出てきているため、自分の申告がどちらの対象かは、提出先自治体のページで確認しておくと迷いません。

申告書の作成・提出の流れ

地方税の申告書は、法人税の申告書ができあがってから作るのが自然な順番です。法人税の課税標準(法人税額)が、法人住民税の法人税割の計算に使われるからです。

使う様式

様式内容提出先
第6号様式道府県民税・事業税・特別法人事業税の確定申告書都道府県税事務所
第20号様式市町村民税の確定申告書市区町村

これらに、均等割額の計算に関する明細書などの別表が付きます。添付書類として決算書(貸借対照表・損益計算書)や法人税申告書別表の写しを求められるのが一般的で、必要な添付は自治体によって案内が異なります。

作成方法は2通り

  1. PCdeskで直接入力する: 追加のソフト費用がかからない反面、法人税の申告書から数字を転記する作業が発生します
  2. 申告ソフトから連携して送信する: 全力法人税やfreee申告などの法人税申告ソフトは、法人税の別表と地方税の申告書をまとめて作成し、e-Tax・eLTAXへ送信する機能を備えています。転記のミスが起きにくく、Mac環境でも進めやすい構成です

どちらを選ぶかは、決算作業全体をどう組み立てるかで決まります。会計ソフトから申告ソフトへのデータの渡しやすさは製品によって差があるため、その比較は会計ソフト比較にまとめました。地方税の申告で消耗しないためには、記帳から申告までの経路をあらかじめ1本につないでおくのが結局は近道です。

申告期限と納付

法人住民税・法人事業税の申告期限は、原則として事業年度終了の日から2か月以内です。3月決算なら5月末、12月決算なら2月末が期限になります。法人税と同じタイミングなので、国税と地方税をまとめて片づける段取りにするのが実務的です。

申告と納付は別の操作である点にも注意が必要です。申告書を送信しただけでは納付は済みません。eLTAXの共通納税(地方税お支払サイト)を使えば、ダイレクト納付・インターネットバンキング・ATMなどで納付できます。ダイレクト納付には事前の口座登録が必要で、手数料はかからないとされています。

つまずきやすい7つのポイント

ここからは、公式マニュアルには手順として書かれているものの、初めてだと引っかかりやすい箇所を挙げます。

1. 利用者IDは送信直後の画面でしか表示されない

前述のとおりです。控え忘れると再確認の手間が増えるので、画面のスクリーンショットか印刷を先に済ませてから閉じるのが安全です。

2. 提出先を後から増やすのは「利用届出(新規)」ではない

利用届出(新規)を行うのは最初の1回だけです。**提出先の自治体や税目を追加するときは「利用届出(変更)」**で手続きします。ここを知らないと「新規」から入り直して混乱しがちです。本店を移転した、23区外の市に事務所を置いた、といった場面で出てくる手続きなので、覚えておくと迷いません。

3. 提出先は「事務所・事業所がある自治体」で決まる

地方税の提出先は、登記上の本店所在地というより、事務所・事業所が所在する自治体という考え方が基本です。自宅を本店にしているひとり法人であれば、その自宅がある都道府県と市区町村が提出先になります。バーチャルオフィスを本店にしている場合や、複数の自治体にまたがる場合は、扱いが個別の事情に左右されるため、提出先候補の自治体に確認したうえで登録するのが確実です。

4. 電子証明書は「決算期に思い立って」では間に合わないことがある

商業登記電子証明書は法務局への申請が必要で、即日というわけにはいきません。マイナンバーカードを使う場合も、署名用電子証明書のパスワードを失念していれば市区町村窓口での再設定が要ります。申告書の作成より先に片づけておく類の作業です。

5. eLTAXには利用可能時間がある

24時間いつでも送信できるわけではありません。通常期は平日8時30分から24時までの運用が基本で、土日祝日と年末年始は休止(休日運用日を除く)、繁忙期には時間が拡大されるといった運用がされています。深夜や休日にまとめて作業する計画を立てていると、送信の段で止まります。1月は給与支払報告書の提出が集中して混雑するため、eLTAX側からも早期提出・オフピーク提出が呼びかけられています。

6. DL版はWindows前提

Macだけで運用しているひとり法人は、この時点で選択肢が「Windows環境を用意する」か「申告ソフト経由で送る」かに分かれます。決算直前に気づくと詰みやすいので、初年度の早い段階で経路を決めておくことをおすすめします。

7. 申告して終わりではない

送信後は、メッセージボックスで受付結果を確認します。受付エラーが出ていれば申告は完了していません。そして納付は別操作です。「送信した=納税も終わった」と思い込むと、納期限後に督促を受けることになります。

まとめ: 詰まるのは「申告書の中身」より手前

地方税の電子申告でひとり法人が止まるのは、税額計算そのものより、その手前の準備段階であることが多いのが実情です。整理すると次の順番になります。

  1. e-TaxとeLTAXは別システムだと理解する
  2. 電子証明書を先に用意する(商業登記電子証明書またはマイナンバーカード)
  3. PCdesk(WEB版)から利用届出(新規)を出し、利用者IDを控える
  4. 提出先と税目を登録する(追加は「変更」で行う)
  5. 法人税の申告書を先に固め、第6号様式・第20号様式を作る
  6. 送信して受付結果を確認し、そのうえで納付する

このうち2と3は決算期と切り離して先に済ませられる作業です。設立初年度のうちに終わらせておくと、決算期にやることが「申告書を作って送る」だけに絞れます。

税務の個別判断はケースによって異なります。取引が複雑になってきた、消費税や固定資産の論点が出てきたという段階では、税理士への相談も選択肢に入れて検討してください。制度・様式・システム仕様は改定されるため、実際の申告時にはeLTAXと提出先自治体の最新情報を確認したうえで進めることをおすすめします。