マイクロ法人の維持費は年間いくら?必ずかかる費用と実額モデル
結論から言うと、マイクロ法人(ひとり法人)の年間維持費は、決算・申告を自分で行う最小構成で年間約11万〜13万円、バーチャルオフィスなどを加えた標準構成で年間約14万〜17万円、税理士に依頼する構成で年間約25万〜60万円が目安です。このうち法人が存続する限り必ずかかるのは法人住民税の均等割(標準税率で年7万円)だけで、残りは構成の工夫次第で大きく圧縮できます。本記事では、必ずかかる費用・実務上ほぼ必要な費用・任意の費用を切り分けたうえで、3つのケース別に年間合計を実額の表で整理します。金額はいずれも執筆時点(2026年7月)の公式情報にもとづくもので、自治体・プラン・契約条件により変動する点にご注意ください。
年間維持費の全体像
まず全体像です。マイクロ法人の維持費は、大きく次の3層に分けて考えると迷いません。
| 分類 | 費用項目 | 年間の目安(執筆時点) |
|---|---|---|
| ①必ずかかる | 法人住民税の均等割 | 約7万円(標準税率) |
| ②実務上ほぼ必要 | 会計ソフト | 約3.3万〜4万円 |
| ②実務上ほぼ必要 | 法人税申告ソフト または 税理士費用 | 約1.1万〜2.4万円(ソフト) / 約10万〜50万円(税理士) |
| ③使う場合のみ | バーチャルオフィス | 約2万〜3.3万円 |
| ③無料で可 | 法人口座・法人カード | 0円(ネット銀行・年会費無料カード) |
「法人を持つと維持費が高い」というイメージは、多くの場合②の税理士費用を前提にしています。マイクロ法人の規模であれば、②をソフトで代替することで年間コストは大きく変わります。
①必ずかかる費用:法人住民税の均等割
法人住民税の均等割は、赤字でも売上ゼロでも毎年必ず発生する税金です。法人の所得ではなく「規模」に応じて課税されるためです。
標準税率では、資本金等の額が1,000万円以下かつ従業者数50人以下の法人の場合、道府県民税が年2万円、市町村民税が年5万円で、合計年7万円となります(出典: 総務省|地方税制度|法人住民税)。マイクロ法人のほとんどはこの最小区分に該当します。
注意点は3つあります。
- 金額は資本金等の額と従業者数で決まる: 資本金等の額が1,000万円を超えると税額区分が上がります。マイクロ法人で資本金を必要以上に大きくしないほうがよい理由のひとつです。
- 自治体により異なる: 上記は標準税率であり、自治体によっては超過税率を採用している場合があります。東京23区内に本店を置く場合は、市町村民税相当分も含めて都民税として都に納付します(参考: 東京都主税局|法人事業税・法人都民税)。正確な税額は本店所在地の自治体の公表資料で確認してください。
- 事業年度の途中設立は月割: 設立初年度は、設立日から事業年度末までの月数で月割計算されます。
つまり「法人を維持する最低ラインは年7万円」と覚えておけば、大きく外れません。
②実務上ほぼ必要な費用
法律上の義務ではないものの、実務上ほぼ避けられないのが会計と申告のコストです。
会計ソフト:年間約3.3万〜4万円
法人は複式簿記での記帳と決算書の作成が必要で、Excelだけで完結させるのは現実的ではありません。主要クラウド会計ソフトのひとり法人向けプランは、執筆時点(2026年7月)で次のとおりです。
| ソフト | プラン | 年額(年払い) |
|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド | ひとり法人プラン | 29,760円(税抜)/32,736円(税込) |
| freee会計 | ひとり法人プラン | 35,760円(税抜)/39,336円(税込) |
(出典: マネーフォワード クラウド 料金プラン、freee会計 新設法人向け料金プラン。料金は改定されることがあるため契約前に公式サイトでご確認ください)
機能や操作感の違い、選び方の詳細は会計ソフト比較の記事で解説しています。
法人税申告:ソフトなら年1.1万〜2.4万円、税理士なら年10万円超
法人税の申告書は個人の確定申告より書類が多く、ここが「税理士に頼むか、自分でやるか」の分かれ目です。
自分で申告する場合、小規模法人向けの申告ソフトを使うのが現実的です。たとえばクラウド型の「全力法人税」は、執筆時点で初年度21,800円+税(キャンペーン適用時は割引あり)、次年度以降は10,000円+税(税込11,000円)で利用できます(出典: 全力法人税 公式サイト)。会計ソフトのデータを取り込んで申告書を作成できるため、取引がシンプルなマイクロ法人なら十分対応可能です。自分で決算・申告を行う手順は決算を自分で行う方法の記事で詳しく解説しています。
税理士に依頼する場合、マイクロ法人の規模では一般に、決算・申告のみのスポット依頼で年10万〜20万円程度、月次顧問契約(顧問料+決算料)では年30万〜50万円程度が相場感とされます。事務所や業務範囲により大きく異なるため、あくまで目安です。売上規模が小さく取引が単純なうちはソフトで自力申告し、事業が複雑になった段階で税理士に切り替える、という順序も選択肢になります。
バーチャルオフィス:使う場合は年2万〜3.3万円
自宅住所で登記するなら費用はかかりません。自宅住所を公開したくない場合や賃貸契約上の制約がある場合に、バーチャルオフィスを使います。執筆時点の例では、GMOオフィスサポートの法人登記・郵便物受取に対応するプランが月額1,650円(月1転送)〜2,750円(週1転送)で、年間では約2万〜3.3万円です(出典: GMOオフィスサポート)。事業者ごとの違いはバーチャルオフィス比較の記事を参照してください。
法人口座・法人カード:無料で維持できる
法人口座はネット銀行(住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行、楽天銀行など)であれば口座維持手数料は無料が一般的です。法人カードも年会費無料のものが複数あります。ここは工夫すれば維持費ゼロにできる項目です。ただし振込手数料は取引の都度発生するため、振込回数が多い場合は手数料体系も比較しておきましょう。
③ケース別:年間維持費のモデル
以上を組み合わせた3つのモデルです。金額は執筆時点(2026年7月)の税込ベースの概算で、端数は丸めています。
モデルA:最小構成(自宅登記・自力申告)
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 70,000円 |
| 会計ソフト(ひとり法人プラン) | 約33,000円 |
| 法人税申告ソフト(2年目以降) | 約11,000円 |
| 法人口座・カード | 0円 |
| 年間合計 | 約11.4万円 |
申告ソフトの初年度料金を含めても約12.7万円です。「法人の維持は年間およそ11万〜13万円から」というのが、執筆時点での現実的な最小ラインです。
モデルB:標準構成(バーチャルオフィス利用・自力申告)
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 70,000円 |
| 会計ソフト | 約33,000〜39,000円 |
| 法人税申告ソフト | 約11,000〜24,000円 |
| バーチャルオフィス | 約20,000〜33,000円 |
| 年間合計 | 約13.4万〜16.6万円 |
自宅住所を出さずに運営したい場合の標準形で、それでも年間15万円前後に収まります。
モデルC:税理士依頼構成
| 項目 | 年額 |
|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 70,000円 |
| 会計ソフト | 約33,000円 |
| 税理士費用(スポット決算〜顧問契約) | 約10万〜50万円 |
| バーチャルオフィス(任意) | 0〜約33,000円 |
| 年間合計 | 約20万〜60万円 |
決算のみのスポット依頼なら約20万〜30万円、月次顧問まで含めると約40万〜60万円が目安です。時間を買う投資として合理的な場面も多いため、自分の時給換算と比較して判断するのがよいでしょう。
④初年度だけかかる費用(設立費用)との区別
維持費を考えるとき、設立時の一時費用と混同しないことが重要です。設立費用は初年度に一度だけ発生します。
- 合同会社: 登録免許税6万円〜(電子定款なら定款の印紙代4万円は不要)で、実費は6万円台から
- 株式会社: 定款認証手数料(資本金額に応じて変動)+登録免許税15万円〜で、実費はおおむね20万円前後から
このほか法人実印の作成費用などがかかります。詳細な内訳と電子定款による節約方法は設立手順の記事で解説しています。「設立に約6万〜25万円(一度きり)+維持に年約11万円〜(毎年)」という2段構えで資金計画を立てると、設立後に慌てずに済みます。
まとめ:維持費の下限は年約11万円、変動要因は申告方法
マイクロ法人の年間維持費のポイントを整理します。
- 法人が存続する限り必ずかかるのは法人住民税の均等割のみで、標準税率なら年7万円(資本金等1,000万円以下・従業者50人以下。自治体により異なる)
- 会計ソフトと申告ソフトを使う最小構成なら年間約11万〜13万円で維持できる
- 最大の変動要因は税理士に依頼するかどうかで、依頼すると年10万〜50万円が上乗せされる
- 法人口座・法人カードは無料で維持でき、バーチャルオフィスは使う場合のみ年2万〜3.3万円程度
金額はいずれも執筆時点(2026年7月)のものです。税額は自治体、ソフト料金はプランや改定により変わるため、最終判断の前に各公式サイト・自治体の情報を必ず確認してください。