マイクロ法人の設立手順を全解説|合同会社を自分で作る流れと費用
結論から言うと、合同会社によるマイクロ法人の設立は、専門家に依頼しなくても自分で完結できます。かかる法定費用は、電子定款を使えば登録免許税の6万円のみ(執筆時点・2026年7月)。準備から登記完了までの期間は、書類作成に数日、登記申請から完了までおおむね1〜2週間が目安です。
この記事では、定款作成から登記後の役所への届出までを時系列で整理します。「何を・どこに・いつまでに」が一度で見渡せる構成にしました。
全体像: 設立は4つのフェーズに分かれる
合同会社の設立は、大きく次の4段階です。
- 基本事項の決定と定款作成(商号・事業目的・登記住所・資本金など)
- 資本金の払い込み(代表者個人の口座に振り込み、通帳コピー等で証明)
- 法務局への登記申請(申請日が会社の設立日になる)
- 登記後の届出(税務署・都道府県・市区町村・年金事務所)
株式会社と違い、合同会社は定款について公証人の認証が不要です。この分だけ手続きも費用も軽く、マイクロ法人に合同会社が選ばれやすい理由のひとつになっています。
フェーズ1: 定款作成 — 電子定款なら印紙代4万円が不要
定款は会社のルールブックで、商号・本店所在地・事業目的・資本金・社員(出資者)構成などを記載します。ここで最初の分岐が「紙で作るか、電子(PDF)で作るか」です。
紙定款と電子定款の費用差
執筆時点(2026年7月)の費用の違いは次のとおりです。
- 紙の定款: 収入印紙代4万円が必要
- 電子定款: 印紙代が不要(0円)
電子定款は、PDF化した定款に電子署名を付与して作成します。自力でやる場合はマイナンバーカードやICカードリーダー等の環境が必要ですが、この4万円の差は大きいので、基本的には電子定款を選ぶのが合理的です。
無料の書類作成サービスという選択肢
現在は、freee会社設立やマネーフォワード クラウド会社設立のような、設立書類を無料で作成できるサービスがあります。画面の案内に沿って入力すると定款や登記申請書類が出来上がる形式で、電子定款にも対応しています。自分で一から様式を調べる手間を省けるため、初めての設立ならこうしたサービスを土台にするのが現実的です(サービスによって電子定款の作成に別途手数料がかかる場合があるので、利用前に条件を確認してください)。
電子定款を完全に自力で作成する場合は、マイナンバーカードの署名用電子証明書と、PDFに電子署名を付与できるソフト、ICカードリーダー(またはスマートフォンの読み取り機能)が必要です。つまずきやすいのは電子証明書まわりで、署名用電子証明書のパスワード(英数字6〜16桁)は入力を一定回数間違えるとロックされ、解除には市区町村窓口での手続きが必要になります。また、証明書の有効期限が切れていると署名できません。この環境整備の手間を考えると、初めての設立では、電子定款に対応した書類作成サービスを利用する方がスムーズなケースが多いはずです。
フェーズ2: 登記住所を決める — 自宅・バーチャルオフィス・賃貸
定款作成と並行して決める必要があるのが、本店所在地(登記住所)です。マイクロ法人の場合、主な選択肢は次の3つです。
- 自宅: 追加費用ゼロ。ただし登記情報は誰でも取得できるため、自宅住所が公開される点は理解しておく必要があります。賃貸物件では契約上の制約がある場合もあります。詳しくは自宅登記のリスクを整理した記事をご覧ください。
- バーチャルオフィス: 月額数百円〜数千円程度で登記用住所を借りられます。自宅住所を出したくない人の定番です。事業者ごとの違いはバーチャルオフィス比較の記事で整理しています。
- 賃貸オフィス・コワーキング: 実際の作業場所が必要な場合の選択肢ですが、マイクロ法人の固定費としては重くなりがちです。
登記後に住所を変更すると変更登記の登録免許税がかかるため、最初にある程度先を見据えて決めておくのが無難です。
フェーズ3: 資本金の払い込みと登記申請
資本金の払い込み
定款作成後、代表者(社員)個人の銀行口座に資本金を振り込みます。この時点では法人口座はまだ作れないため、個人口座で問題ありません。通帳のコピー等を「払込みがあったことを証する書面」として登記書類に添付します。
法務局への登記申請 — 登録免許税は最低6万円
本店所在地を管轄する法務局に、設立登記を申請します。合同会社の登録免許税は「資本金の額×0.7%」で、計算結果が6万円に満たない場合は6万円です(執筆時点)。資本金が少額になりがちなマイクロ法人では、実質的に6万円と考えて差し支えありません。
主な提出書類は、設立登記申請書、定款、代表社員の就任承諾書、払込みを証する書面、印鑑届書などです。申請方法は窓口・郵送・オンラインから選べます。
重要なのは、登記申請した日が会社の設立日になることです。設立日にこだわりがある場合は、その日に申請が受理されるよう逆算して準備します。申請後、補正(不備の修正)がなければ、完了までの期間はおおむね1〜2週間が目安です。
なお、申請書類に不備があった場合は、法務局から電話などで「補正」の連絡が入ります。指定された期間内に修正すれば申請は有効なままで、設立日(申請日)も変わりません。補正の原因としてよくあるのは、印鑑の押し漏れ、定款と登記申請書で商号や本店所在地の表記が一致していない、登録免許税の納付関係の不備といったものです。申請書には日中つながる電話番号を記載し、連絡の行き違いを防ぎましょう。
登記が完了したら、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書を取得しておきましょう。この後の届出や法人口座の開設で繰り返し使います。
フェーズ4: 登記後の届出 — ここが一番漏れやすい
登記が終わっても、設立作業はまだ半分です。以下の届出には期限があり、特に年金事務所は期限が短いので注意してください(いずれも執筆時点の制度に基づきます)。
税務署への届出
- 法人設立届出書: 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に提出します。
- 青色申告の承認申請書: 設立第1期から青色申告を受けるには、設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までに提出が必要です。期限を過ぎるとその事業年度は青色申告の特典(欠損金の繰越控除など)を受けられないため、設立届と同時に出してしまうのが安全です。
- そのほか、給与を支払う場合は給与支払事務所等の開設届出書なども提出します。
都道府県・市区町村への届出
地方税(法人住民税・法人事業税)のため、都道府県税事務所と市区町村(東京23区は都税事務所のみ)にも法人設立届出書を提出します。期限は自治体によって異なり、例えば東京都は事業開始の日から15日以内とされています。税務署より短いケースがあるので、自分の自治体の期限を必ず確認してください。
年金事務所への届出 — 5日以内と最短
法人は、社長ひとりで役員報酬を支払う場合でも、原則として健康保険・厚生年金保険への加入が義務です。健康保険・厚生年金保険新規適用届は、事実発生から5日以内に管轄の年金事務所へ提出するとされています。あわせて被保険者資格取得届(扶養家族がいれば被扶養者届も)を提出します。登記完了を待つ手続きの中では最も期限が短いため、登記事項証明書が取れたら真っ先に着手する項目です。
これらの届出は提出先が3〜4か所に分かれるため、「税務署に出したので終わり」と誤解して都道府県・市区町村への届出が漏れる、というパターンが起きやすい構造です。現在は、マイナポータルの「法人設立ワンストップサービス」を使うと、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への設立関連の届出をオンラインでまとめて行うことも可能です。個別に提出する場合も、提出先・書類名・期限の一覧を先に作ってから動くのが確実です。
費用と期間の目安まとめ
執筆時点(2026年7月)の法定費用は次のとおりです。
| 項目 | 電子定款 | 紙の定款 |
|---|---|---|
| 定款印紙代 | 0円 | 4万円 |
| 登録免許税 | 6万円〜 | 6万円〜 |
| 合計(最低) | 6万円 | 10万円 |
これに加えて、法人実印の作成費、登記事項証明書・印鑑証明書の取得手数料、バーチャルオフィスを使う場合はその利用料が実費としてかかります。
期間は、書類準備に数日〜1週間、登記申請から完了まで1〜2週間、その後の届出に1〜2週間程度を見ておくと、思い立ってから約1か月で「動ける法人」になるイメージです。
なお、登記完了までの日数は法務局ごとの混雑状況で変わり、各法務局は「登記完了予定日」を公表しています。登記が完了しても法務局から個別の連絡は原則として来ないため、予定日を過ぎたら自分で登記事項証明書の取得などで確認する必要があります。設立が集中する時期(年度替わりの3月・4月など)は通常より時間がかかる傾向があるため、法人口座の開設や取引開始の予定がある場合は、スケジュールに余裕を持たせておくと安心です。
まとめ: 手順を知れば自分で完結できる
合同会社によるマイクロ法人の設立は、①電子定款で作成(印紙代0円)、②登記住所を先に固める、③法務局に申請(登録免許税6万円〜)、④税務署・都道府県・年金事務所へ期限内に届出、という流れです。無料の書類作成サービスを使えば、書類面のハードルはかなり下がっています。
設立が終わったら、次は経理体制づくりです。届出書類の控えが揃ううちに会計ソフトを決めておくと初年度の記帳がスムーズなので、設立後の会計ソフト比較の記事もあわせて参考にしてください。
※本記事の費用・期限などの制度情報は執筆時点(2026年7月)のものです。最新の情報は国税庁・日本年金機構・法務局等の公式情報でご確認ください。