法人設立後にやること完全チェックリスト|30日以内の手続き一覧と期限
法人設立の登記が完了しても、それはスタートラインにすぎません。設立後の最初の30日前後には、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出が集中しており、なかには「事実発生から5日以内」という短い期限のものもあります。この記事では、ひとり法人(合同会社・株式会社)が設立登記後にやるべき手続きを、提出先・期限・必要なもの・提出方法つきの一覧表に整理しました。各手続きの根拠は国税庁・日本年金機構・東京都主税局などの公式情報を確認したうえで記載しています。
なお、設立登記そのものの流れは法人設立の手順まとめで解説しています。この記事は「登記が終わった後」が対象です。
制度の内容・期限はいずれも執筆時点(2026年7月)の情報です。期限・要件は自治体や個々の状況により異なる場合があるため、実際の手続きにあたっては所轄の税務署・都税事務所(県税事務所)・市区町村・年金事務所で最新の情報を確認してください。
設立後30日チェックリスト(全体像)
まず全体像です。上から期限の短い順・緊急度の高い順に並べています。
| ✅ | 手続き名 | 提出先 | 期限 | 必要なもの | 方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| ☐ | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 年金事務所(事務センター) | 事実発生(設立)から5日以内 | 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)など | e-Gov電子申請・郵送・窓口 |
| ☐ | 被保険者資格取得届 | 年金事務所(事務センター) | 資格取得(就任・雇用)から5日以内 | マイナンバーまたは基礎年金番号 | e-Gov電子申請・郵送・窓口 |
| ☐ | 法人設立届出書(都道府県) | 都道府県税事務所 | 自治体により異なる(例: 東京都は事業開始から15日以内) | 定款の写し・登記事項証明書(自治体による) | eLTAX・郵送・窓口 |
| ☐ | 法人設立届出書(市区町村) | 市区町村役場 | 自治体により異なる | 定款の写し・登記事項証明書(自治体による) | eLTAX・郵送・窓口 |
| ☐ | 給与支払事務所等の開設届出書 | 所轄税務署 | 開設の事実があった日から1か月以内 | 届出書のみ | e-Tax・郵送・窓口 |
| ☐ | 役員報酬の決定(定期同額給与) | ―(社内決定・議事録作成) | 事業年度開始(設立)から3か月以内の決定が損金算入の前提 | 株主総会議事録・同意書等 | 社内手続き |
| ☐ | 法人設立届出書(税務署) | 所轄税務署 | 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 | 定款の写し | e-Tax・郵送・窓口 |
| ☐ | 事前確定届出給与に関する届出(賞与を出す場合のみ) | 所轄税務署 | 新設法人は設立の日以後2か月を経過する日まで | 届出書・付表 | e-Tax・郵送・窓口 |
| ☐ | 青色申告の承認申請書 | 所轄税務署 | 設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで | 申請書のみ | e-Tax・郵送・窓口 |
| ☐ | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 所轄税務署 | 法定期限なし(提出月の翌月末に承認とみなされる) | 申請書のみ | e-Tax・郵送・窓口 |
| ☐ | 法人口座の開設 | 銀行・ネット銀行 | 期限なし(早めの申込が一般的) | 履歴事項全部証明書・定款・代表者本人確認書類・事業実態を示す資料 | オンライン・窓口 |
| ☐ | 会計ソフト導入と開始残高設定 | ― | 期限なし(取引発生前が望ましいとされる) | 資本金の入金記録・設立費用の領収書 | オンライン |
以下、それぞれの手続きを提出先ごとに解説します。
チェックリストをダウンロード(無料・登録不要)
上の表を、Excel・Googleスプレッドシート・Numbersでそのまま開けるCSV形式にまとめました。無料・登録不要です(メールアドレスの入力や会員登録は必要ありません)。
「順番・手続き・提出先・期限・状態」の5列で、上の表と同じ12件を期限の短い順に並べています。「状態」列は初期値が「未着手」なので、終わったものから「完了」などに書き換えて進捗管理に使えます。文字化けしないようUTF-8(BOM付き)で作成しているため、Excelでもそのまま開けます。
期限の内容は執筆時点(2026年7月)の公式情報にもとづく一般的な整理です。自治体により異なる項目(都道府県・市区町村への設立届)は、所在地の自治体サイトで確認したうえで書き換えてお使いください。
1. 税務署への届出(国税)
法人設立届出書 — 設立から2か月以内
法人を設立した場合、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に「法人設立届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します。定款の写しを添付し、e-Taxまたは書面で提出できます。
青色申告の承認申請書 — 「設立3か月」と「第1期末」の早い方の前日まで
欠損金の繰越控除など青色申告の各種制度を第1期から使うには、承認申請が必要です。設立第1期の申請期限は「設立の日以後3か月を経過した日」と「設立第1期の事業年度終了の日」のうちいずれか早い日の前日です。設立から決算日までが3か月未満の短い事業年度にした場合は期限がさらに早まる点に注意が必要です。期限を過ぎると第1期は白色申告となり、翌期からの適用になります。
給与支払事務所等の開設届出書 — 開設から1か月以内
役員報酬を支払うひとり法人も「給与等の支払者」に該当します。給与支払事務所等を開設した日から1か月以内に、所在地の所轄税務署へ届出書を提出します。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 — 期限はないが早めに
源泉徴収した所得税は原則として翌月10日までに毎月納付ですが、給与の支給人員が常時10人未満の場合、申請により年2回(7月10日・1月20日)にまとめられます。提出期限は定められていませんが、原則として提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、それ以降に源泉徴収する分から適用されます。適用開始前の月分は原則どおり翌月10日納付となるため、給与支払開始と同時期の提出が実務上は一般的です。
2. 都道府県・市区町村への届出(地方税)
法人住民税・法人事業税のため、税務署とは別に都道府県と市区町村にも設立届が必要です(東京23区内は都税事務所への提出に一本化)。期限は自治体ごとに異なり、たとえば東京都は「事業開始の日から15日以内」と、税務署の2か月より大幅に短く設定されています。様式名も「法人設立・設置届出書」など自治体により異なるため、所在地の自治体サイトで必ず確認してください。提出はeLTAX(地方税ポータル)・郵送・窓口が利用できます。
提出先の自治体を決めているのは、登記した本店所在地です。バーチャルオフィスを登記住所にしている場合も、その住所地の都道府県税事務所・市区町村が提出先になり、以後の納付書や決定通知もその住所宛てに届きます。住所をどこにするかは、届出先だけでなく郵便物の受け取り方や登記情報の公開範囲まで一括で決まる項目です。まだ確定していない段階であれば、判断材料を自宅住所で法人登記するリスクに、各社の登記可能プランと郵便転送の条件をバーチャルオフィス比較に整理しています。
3. 社会保険(年金事務所)への届出
法人は、役員1人だけで従業員がいなくても、役員報酬を支払っていれば健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。次の2つを提出します。
- 健康保険・厚生年金保険 新規適用届: 事業所が適用対象となった事実発生から5日以内。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)などを添付
- 被保険者資格取得届: 役員・従業員が資格を取得した日から5日以内
「5日以内」は設立後の手続きで最も短い期限です。e-Gov電子申請・郵送・窓口のいずれでも提出できます。役員報酬が未決定・無報酬の場合の扱いなど、加入判定の考え方は社会保険の仕組み解説にまとめています。
4. 役員報酬の決定 — 実質的な期限は「3か月以内」
役員報酬そのものは届出制ではありませんが、税務上は期限があるのと同じです。役員給与を損金算入するための代表的な類型である「定期同額給与」は、毎月同額を支給する給与で、その額の改定は原則として事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行う必要があるとされています。新設法人では、設立後3か月以内に株主総会(合同会社は社員の同意)で金額を決定し、議事録等を残しておく流れが一般的です。
また、役員に賞与(ボーナス)を支給して損金算入するには「事前確定届出給与に関する届出」が必要で、新設法人の提出期限は設立の日以後2か月を経過する日までです。
具体的な金額設定は税負担・社会保険料に直結するため、個別の判断は税理士等の専門家への相談が推奨されます。
5. 法人口座の開設
法定の期限はありませんが、資本金の移動・売上入金・報酬支払の記録を個人口座と分けるため、設立直後の申込が一般的です。審査には数日〜数週間かかることがあり、履歴事項全部証明書・定款のほか、事業内容が確認できる資料(ウェブサイト・契約書等)の提出を求められる場合があります。ひとり法人ではネット銀行を含めて比較検討されることが多く、審査に時間がかかる前提で早めに動くのが無難です。口座維持費・他行宛て振込手数料・バーチャルオフィス登記の扱いといった申込先の条件差は法人口座の比較で整理しています。
口座が開設できたら、続けて法人名義のクレジットカードを申し込む流れが一般的です。法人カードの申込では法人口座を引き落とし口座に指定するのが基本なので、順番としては口座が先になります。決済を法人名義に寄せておくと、個人立替と精算のやり取りが減り、明細をそのまま会計ソフトに取り込めるため、第1期の記帳の手間が変わります。年会費無料で作れるものを含めた選択肢は法人カード比較で整理しています。
6. 会計ソフトの導入と開始残高の設定
第1期の記帳は設立日から始まります。導入時にやることは主に次の2つです。
- 開始残高の設定: 設立日時点の資本金(現金・預金)を登録する
- 創立費・開業費の整理: 設立前後に個人で立て替えた費用の領収書を集め、繰延資産等として計上できるか整理する
取引が積み上がる前に導入したほうが後の修正が少なく済みます。ひとり法人向けの主要クラウド会計ソフトの違いは会計ソフト比較で整理しています。
手続きをまとめて行う方法: 法人設立ワンストップサービス
マイナポータルの「法人設立ワンストップサービス」を使うと、税務署への法人設立届出書・青色申告承認申請、年金事務所への届出など、設立後の一連の手続きをオンラインで一括申請できます。法人代表者のマイナンバーカードが必要です。個別にe-Tax・eLTAX・e-Govを使い分ける方法と、ワンストップでまとめる方法のどちらでも構いません。
30日を過ぎたら: 年間スケジュールへ
設立30日前後の届出が一段落したら、次は決算・年末調整・法定調書・償却資産申告といった「毎年やってくる手続き」の管理に移ります。ひとり法人の年間手続きカレンダーに月別で整理しているので、この記事のチェックリストが埋まったら続けて確認してください。
まとめ
- 最短の期限は社会保険の「5日以内」、次いで都道府県・市区町村の設立届(東京都は15日以内)
- 税務署関係は「給与支払事務所の開設(1か月)」「設立届・事前確定届出給与(2か月)」「青色申告承認(3か月経過日と期末の早い方の前日)」の順
- 役員報酬の決定は届出不要でも、損金算入の観点から設立3か月以内が実質的な区切り
- 迷ったらマイナポータルの法人設立ワンストップサービスで一括申請も可能
繰り返しになりますが、期限・要件は自治体や個々の状況により異なります。この記事は執筆時点(2026年7月)の公式情報に基づく一般的な整理であり、個別の税務判断は所轄官庁または税理士等の専門家に確認してください。