全力法人税の使い方|料金・会計ソフト連携・自分で法人税申告する流れ
本記事は公式サイト等の公開情報の調査にもとづく解説です(執筆時点・2026年8月)。料金・機能は改定されることがあるため、契約前に公式サイトでご確認ください。
マイクロ法人(ひとり法人)が決算・法人税申告を自分で行う場合、会計ソフトだけでは完結しません。決算書から先の「法人税申告書(別表)」を作るには、別に申告ソフトが必要です。その選択肢として名前が挙がることが多いのが、ジャパンネクス株式会社が提供するクラウド型の「全力法人税」です。
ネット上には「全力法人税は基本無料」という説明も見かけますが、無料の範囲には明確な線があります。この記事では、公式サイトに記載されている現行の料金体系と機能の境界、会計ソフトからのデータ連携の実際、そして申告完了までの流れを順に整理します。決算作業の全体像から知りたい方は「マイクロ法人の決算は自分でできるか」を先に読むと位置づけがつかめます。
なお、税制に関する記述は一般的な制度の説明にとどめています。個別の税務判断はケースにより異なるため、実際の申告にあたっては国税庁等の一次情報の確認や、必要に応じて税理士への相談をおすすめします。
全力法人税とは:決算書の先を担当するクラウド申告ソフト
全力法人税は、会計ソフトで作成した決算数値を取り込み、法人税・地方税の申告書一式を作成するクラウドサービスです。インストール不要でブラウザから利用でき、公式サイトによれば導入企業は3万社を超えるとされています。
公式サイトで作成できるとされている書類は次のとおりです。
- 法人税申告書(別表一・四・五(一)・五(二)などの別表一式)
- 地方税申告書(法人都道府県民税・法人事業税・法人市町村民税)
- 勘定科目内訳明細書
- 法人事業概況説明書
- 減価償却資料
- 消費税申告書(課税事業者の場合)
電子申告にも標準対応しており、国税のe-Tax、地方税のeLTAX向けにファイルを出力して連携する構成です(2019年4月1日以後終了事業年度から対応)。
つまり役割分担としては、日々の記帳と決算書の作成までが会計ソフト、そこから先の申告書作成と電子申告データの生成が全力法人税、という切り分けになります。会計ソフト側の選び方は「会計ソフト比較」で整理しているので、まだ決めていない方はそちらを先にご覧ください。
料金:無料でできる範囲と、有料になる境界
ここが最も誤解されやすい部分です。「無料の申告ソフト」と紹介されることがありますが、正確には申告書の作成・画面上での確認までが無料で、申告を完了させるために必要な出力と電子申告は有料という構成です(執筆時点)。
無料でできること
- アカウント登録と会計データの取り込み
- 申告書の作成・自動計算、画面上での内容確認
- 勘定科目内訳明細書・事業概況説明書の作成
公式サイトは、他社では有料になりがちな勘定科目内訳書と事業概況説明書の作成が料金に含まれる点を特徴として挙げています。
有料になること
- すべての申告書類の出力(無料の状態では確認できない書類があります)
- 電子申告用ファイルの出力・電子送信
要するに、作りかけを試すところまでは無料で、提出できる形にするところから有料です。実務上は「申告を終えるなら有料になる」と考えておくと見積もりを外しません。
料金表(執筆時点・2026年8月)
| 区分 | 料金(税抜) | 税込 |
|---|---|---|
| 初年度(1事業所) | 通常21,800円/割引適用時19,620円 | 割引適用時21,582円 |
| 翌年度以降(1事業所) | 10,000円 | 11,000円 |
| 複数事業所オプション | 6,980円(通常7,980円) | 7,678円 |
| 消費税申告(1会計期間) | 3,800円 | 4,180円 |
(出典: 全力法人税 公式サイト、全力法人税の料金システムについて。割引は公式サイト掲載のキャンペーンによるもので、適用条件・金額は変動します)
料金の考え方で押さえておきたい点が3つあります。
- 課金は「会計期間ごと」: 月額サブスクリプションではなく、1つの会計期間に対して1回支払う方式です。支払い後は、その会計期間についてはいつでも何度でも出力できるとされています
- 自動課金ではない: 継続課金される仕組みではなく、申告する年度ごとに自分で支払い操作を行います。過年度分をまとめて作る場合は、年度ごとに料金が発生します
- 返金保証がある: 公式サイトでは購入日から30日以内の返金保証が案内されています
消費税申告が別料金である点も見落としやすいところです。免税事業者のマイクロ法人なら不要ですが、インボイス登録などで課税事業者になっている場合は、上記に4,180円(税込)が上乗せされる前提で考えることになります。
会計ソフトからのデータ連携の実際
全力法人税の売りは会計データの取り込みですが、API連携で自動同期されるわけではありません。実態は会計ソフト側でCSVを書き出し、全力法人税側で取り込むという手動のインポート方式です。ここを誤解していると、作業時間の見積もりがずれます。
公式サイトが連携対応として挙げているのは、弥生会計、弥生会計オンライン、freee、マネーフォワード、会計王です。これら以外の会計ソフトを使っている場合も、所定の様式にデータを整形すれば取り込めるとされています。
freeeから取り込む場合
公式のヘルプによると、freeeからは「勘定科目」「仕訳帳」「開始残高」の3種類のデータを移行します(出典: Freeeの会計データをインポートする方法)。
- 勘定科目: freeeの「マスタ・口座」→「勘定科目」からCSVをエクスポートし、全力法人税の「インポート」→「会計データ取込」で取り込みます。独自に設定した勘定科目や税区分がある場合は、対応する分類を選び直す作業が発生します
- 仕訳帳: 形式は「(旧)CSV」、文字コードはShift_JIS、摘要項目にチェックを入れてエクスポートします。仕訳番号を使っている場合は事前に設定変更が必要とされています
- 開始残高: 1年目は「その他設定」→「開始残高」から、2年目以降は貸借対照表からエクスポートします
弥生会計から取り込む場合
弥生会計では、エクスポート時に書式を「汎用形式」、区切り文字を「カンマ(CSV)形式」に指定して出力します。
取り込み後にやること
どの会計ソフトからでも共通するのは、取り込んだ後に全力法人税側の残高試算表と、会計ソフト側の残高試算表が一致しているかを突き合わせる工程です。ここが合っていないまま申告書を作ると、以降の別表がすべてずれます。連携という言葉から想像するほど全自動ではなく、「書き出す・取り込む・照合する」の3手間がかかると理解しておくのが現実的です。
一致さえ確認できれば、その先は自動計算の比重が大きくなります。公式サイトは、条件次第で申告書作成が10数分で終わる場合もあると案内しています。
自分で申告する場合の流れ
全力法人税を使う前提で、決算日から提出までの流れを整理します。
1. 決算整理を終える(会計ソフト側)
減価償却費の計上、売掛金・未払金の整理、預金残高の照合などを済ませ、決算書の数値を確定させます。ここが固まっていないと申告ソフトに渡せません。
2. 会計データを取り込む(全力法人税)
前述のCSVエクスポート・インポートを行い、残高試算表を照合します。
3. 申告書を作成する
法人税の別表、地方税申告書、勘定科目内訳明細書、事業概況説明書を作成します。役員報酬、法人税・住民税の損金不算入の扱い、繰越欠損金の有無などは、画面の入力ガイドに沿って確認しながら進める形になります。
4. 出力オプションを購入して提出する
内容を確認したうえで料金を支払い、申告書一式を出力するか、e-Tax・eLTAX向けのファイルを出力して電子申告します。電子申告には、e-Taxの利用者識別番号、eLTAXの利用者ID、法人の電子証明書(商業登記電子証明書など)といった事前準備が必要です。これらは決算期より前に用意できるため、期限直前の作業を減らす意味でも早めの取得が向いています。
5. 納付する
法人税・地方税ともに、申告・納付の期限は原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。申告と並行して納付手続きが必要になります。年間の提出物と期限の全体像は「ひとり法人の年間手続きカレンダー」にまとめています。
向く人・向かない人
公式情報から読み取れる機能範囲と、必要になる作業量をふまえると、次のように整理できます。
向いている法人
- 役員1名で取引数が少なく、売上先も限られている
- 会計ソフトで日常的に記帳しており、決算整理まで自分でできる
- 対応会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を使っている
- CSVの書き出し・取り込み・照合という作業に抵抗がない
- 年1回の申告に、まとまった作業時間を確保できる
向いていない法人
- 事業所が複数あり、地方税の申告先が分かれている(オプション料金と作業が増えます)
- 固定資産が多い、在庫がある、取引類型が多いなど決算整理が複雑
- 組織再編、税額控除の適用、特殊な取引など判断を要する論点がある
- 申告書の内容を自分で検証する時間が取れない
申告ソフトは計算と様式を担当しますが、入力の前提が誤っていれば、そのまま誤った申告書ができあがります。どの数字がどこから来ているかを確認しながら進められるかどうかが、実質的な分かれ目です。
税理士に依頼した場合との費用比較
金額だけを並べると次のようになります(執筆時点の一般的な相場観)。
| 方法 | 年間の目安 |
|---|---|
| 会計ソフト+全力法人税(初年度) | 約5.5万〜6.1万円 |
| 会計ソフト+全力法人税(2年目以降) | 約4.4万〜5.0万円 |
| 会計ソフト+税理士スポット決算依頼 | 約13万〜33万円 |
| 会計ソフト+顧問契約 | 約33万〜53万円 |
(会計ソフトはひとり法人向けプランの年額3.3万〜3.9万円で計算。税理士費用は事務所・業務範囲により大きく異なります)
差額は年間10万円以上になりますが、これは「自分の作業時間と、誤りのリスクを引き受ける対価」です。決算作業に何時間かかるかを見積もり、自分の時給と比べると判断しやすくなります。法人住民税の均等割を含めた年間コスト全体は「マイクロ法人の維持費」で試算しています。
初年度は制度と操作の理解に時間がかかり、2年目以降は前年の申告書を踏襲できるぶん負担が下がる構造です。料金面でも初年度21,800円+税に対し翌年度以降は10,000円+税と下がるため、「初年度だけ税理士に依頼して型を作り、2年目以降は自分で回す」という順序も選択肢になります。スポット依頼と顧問契約で費用がどう変わるか、どの局面から依頼が合理的になるかは「マイクロ法人に税理士は必要か」で整理しています。
まとめ
執筆時点の公式情報から整理すると、全力法人税は次のようなサービスです。
- 会計ソフトの決算書から法人税・地方税の申告書一式を作成するクラウドソフトで、e-Tax・eLTAXにも対応
- 作成と画面確認までは無料だが、申告書の出力と電子申告は有料。初年度21,800円+税(割引適用時19,620円+税)、翌年度以降10,000円+税
- 消費税申告は1会計期間3,800円+税、複数事業所は6,980円+税が別途必要
- 課金は会計期間ごとの都度払いで自動課金ではなく、30日間の返金保証がある
- 会計ソフト連携はAPIの自動同期ではなくCSVの書き出し・取り込み方式で、取り込み後の残高照合が要になる
「基本無料で申告まで終わる」という説明は正確ではない一方、税理士費用と比べれば年間コストは大きく下がります。取引がシンプルなマイクロ法人にとっては現実的な選択肢ですが、判断を要する論点がある場合は税理士への相談を含めて検討するのが無難です。
料金・機能は改定されることがあるため、申し込み前に公式サイトで最新の条件をご確認ください。制度面は国税庁、電子申告の手続きはe-Tax・eLTAXの公式情報が一次情報になります。